SUGAI DENTAL CLINIC KAMAKURA SUGAI DENTAL CLINIC KAMAKURA

SUGAI DENTAL CLINIC KAMAKURA

Case

連結された上顎前歯の不良補綴物と重度歯周炎
  • 歯周病症例

上の前歯が痛く時々腫れる。膿も出る事がある。との主訴を訴え来院。また,だんだん前歯が出てきているとも感じており、非常に不安である。との事。臨床的には歯肉は線維性で上顎前歯口蓋側の浮腫を除けば、まったく問題は見当たらないように見える。ペリオチャートを用い、全額的なプロービングを行ったところ、当該部位以外にも重度歯周炎と診断される部位があった。

  • 治療前
    上顎前歯に3本の連結された不良補綴物があり、その口蓋歯肉は炎症症状を呈している。咬合状態も芳しくなく連結された補綴物はフレアーアウト(下の前歯に突き上げられて上の前歯が前に出てきている)している。
  • 治療後
    自己管理もできており、良好な経過を辿っている。
患者様基本情報
  • 年代 60歳代
    性別 女性
  • 主訴 上の前歯に違和感がある。上の前歯に違和感がある。
  • 自覚症状 ブラッシング時に出血があることがある。歯間部の歯肉が腫れたことがある。
  • 治療期間 1年
    通院回数 20回程度
  • 治療費用 200万円
治療経過

初診時咬合面観
上顎前歯には辺縁不適後な4歯の連結された補綴物が装着されている。
マージン部の歯肉は炎症症状を呈し、特に上顎中切歯間の歯肉はつよい浮腫を呈している。

初診時のペリオチャート
上下顎ともに6mm以上のポケットが認められる。特に当該部位、上顎前歯部においては出血点も多く重度歯周炎に罹患している。

左右側方面観
目立った歯肉の発赤.腫脹は認められない。辺縁不適合な補綴物が認められる。

上下右側ペリオチャート
上下顎共に6mm以上のポケットが多く、ブリーディング部位も多く重度歯周炎である。
上下左側ペリオチャート
他の部位と同様、6mm以上のポケットが多く、またブリーディングも多い。 ここ、重度歯周炎である。
骨移植を伴う歯肉剥離掻把術。 初期治療終了後、改善の認められない上顎前歯部、右上中切歯の3壁性骨欠損部に骨移植を行った。歯肉弁の剥離反転後、グレイシーキュレットによって骨欠損部の不良肉芽を掻把した。 同時に縁下カリエスに対応するため根尖側移動術も行った。歯槽骨頂縁を現在の歯肉頂縁部の3㎜下に設定した。
デブライドメント終了時 同部位のレントゲン写真 両隣在歯等の縁下カリエス処理の為の根尖移動術を同時に行った。 レントゲン上にも明確に確認できる。レントゲン写真で右上中切歯の遠心に 今朝1/2の垂直性骨欠損が認められる。
骨移植 右上中切歯遠心の3壁性骨欠損部のグレイシーキュレットでルートプレーニング、デブライドメントを行った後、骨移植を行った。

左上臼歯部
当該部位は広範にわたり骨吸収が認められる。特に、左上第一大臼歯の近心の骨吸収は大きく、根分岐部にも及ぶ。当該部位は骨欠損部と根面の掻把のみ行った。

左下臼歯部
第一大臼歯近遠心隣接面に司直性骨吸収が認められる。 上顎同様骨欠損部、根面の掻把のみ実施した。

再評価時 外科処置終了後 外科処置終了後、再評価時の口腔内である。上顎前歯部は当初予定した位置まで歯肉辺縁が下がり、カリエスは歯肉縁上に現れた。
再評価時のペリオチャート
PDは全て3mm以内に収まっており良好である。
再評価時の左上下側方面観 歯肉は引き締まり、発赤主張は認められない。 辺縁不適合な補綴物が認められる。
再評価時の左上下 ペリオチャート
5mmのPDも認められるものの、ブリーディングは認められない。
暫間補綴物装着時 正面観 暫間補綴物を用い、咬合の確認、形態の修正を行った。
最終補綴物装着時
最終補綴物装着後の上顎前歯部 ペリオチャート
初診時に比べ顕著な改善が認められる。

最終補綴処置後の左右側方面観
一部、金属補綴物を残してあるが、撤去交換予定。

最終補綴処置後の左側方面 ペリオチャート
初診時に比べ顕著な改善が認められる。
メインテナンス時 1年後正面観 1年後の状態。自己管理がなされ好ましい状態を維持している。

上顎前歯部 骨移植前と術後メインテナンス時のレントゲン規格写真
初診時右上中切歯の近心に認められた垂直性骨欠損部は骨移植後メインテナンス時には消退し新生骨で満たされている。

左下臼歯部初診時、メインテナンス時の比較写真 骨移植は実施していないものの、2か所の骨欠損部は新生骨で満たされている

この症例の治療のメリットについて

根長1/2に渉る垂直性骨欠損を有する右上中切歯に骨移植を実施し、骨欠損が消失した事により、当該歯の予後は大きく変化した。また、左下臼歯部も同様に骨欠損が消退したことにより予後は改善された。よって、最終補綴処置により、審美的問題、機能的問題もクリアされ患者のQOLの向上に大きく貢献したと考える。

この症例の治療のデメリットについて

骨移植を伴う歯周外科処置等、外科処置による精神的負担や経済的負担が大きかったと思われる。