SUGAI DENTAL CLINIC KAMAKURA
症例 Case
- 歯周病症例
- 難治療症例
過去8軒の歯科医院で全顎抜歯、総義歯を勧められたが納得できず、最後に受診した歯科医に矯正専門医を紹介された。矯正専門医でも歯周病が重度であることを根拠に矯正治療は不可能との診断を下した。そうしたところ、当該患者は歯周病を治療できる歯科医を紹介してほしいと矯正医に依頼。矯正医から紹介依頼され当院受診。ペリオチャート診査時には全顎重度歯周炎と診断された。が、臨床所見において歯肉性状は強度の浮腫を呈しており、動揺度はクラス1~Ⅱまたプラークスコアも30%程度であり、患者の同意を得て、矯正治療が可能なレベルとなるまでの炎症の除去を目的とした治療を開始した。
尚、初診時の口腔内写真は矯正専門医の鳥巣秀夫先生のご厚意による。
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治療前全額的な歯肉の強い浮腫が認められる。左上前歯部には排膿が認められる。前歯部の歯列は叢生、捻転、転移等認められる。歯列の乱れの割にはプラークの付着が少なく思われる。(初診時の口腔内写真は矯正専門医鳥巣 秀夫先生の御厚意による。)
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治療後正中のずれは認められるものの咬合関係の改善、歯肉の臨床症状は大きな改善がなされた。治療後、患者は歯の存続の心配ではなく、審美的な問題を気にするほどあかるくなった。
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年代 40代性別 女性
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主訴 人前で口を開けられなく恥ずかしい食べにくい。人前で口を開けられなく恥ずかしい食べにくい。
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自覚症状 歯肉の発赤、腫脹、疼痛あり
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治療期間 矯正治療を含め3年。通院回数 矯正治療を除き50回程度
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治療費用 50万円程度。(矯正治療を除く)
初診時のフルマウスレントゲン
全学的に根長1/2から2/3の垂直的・水平的な高度の骨吸収像がみとめられる。 上下顎ともに根尖に達する骨吸収像が認められる。
初診時の口腔内写真
正面観 叢生、捻転、転移が認められ、歯肉は強度の浮腫を呈しており、特に21,22,23部の歯肉は排膿も認められる。
ほとんどの歯が6mm以上のポケットを有し、bleeding箇所が多くpocketactivity(ポケットの中の細菌の活動性)も活性が高いことが明白である。prognosis(予後)もQ,P,Hが多い。
初診時右側方面
前歯部と同様浮腫が認められ、歯列異常やオープンコンタクトが認められる。
歯部同様6mm以上のPD,bleeding箇所多く認められる。
初診時左側方面
前歯部と同様浮腫が認められ、歯列異常やオープンコンタクトが認められる。
前歯部同様6mm以上のPD,bleeding箇所多く認められる。
歯周基本治療 プラークコントロール時に用いた補助的刷掃用具
本症例はペリオチャートから明らかであるように外科処置非適応症例である。従って、炎症の除去のための選択肢は徹底した基本治療、プラークコントロールとスケーリング・ルートプレーニングのみである。主たる歯ブラシ以外に、補助的刷掃用具として、歯間ブラシ(ブラシ6種類)、エンドタフトブラシ、スーパーフロス、0.1%SnF2 (Gel-Tin)を用いて行った。
(SnF2は 生育可能なプラーク中の微生物の数が0.1%SnF2で4~80%また、 0.4% SnF2では 90~99%減少することが 認められた。)口腔清掃は原則一日1回、就寝直前に完璧を期して実施する事とした。朝と昼は時間が無くてもマウスウォッシュは必ず使用することとした。但し、患者にはあくまでメカニカルデブライドが基本で最重要であることは完全に理解させてある。
歯周基本治療 メトロニダゾールを併用したスケーリング・ルートプレーニング
著しい改善が認められた。出血箇所も少なく評価できる状態である。 歯肉の性状も良好と思われる。
著しい改善が認められた。出血箇所も少なく評価できる状態である。
著しい改善が認められた。出血箇所も少なく評価できる状態である。
良好。
歯肉の状態は良好である。
治療前後の比較 正面観
俄かには、同一患者とは思えない程の変化である。本症例おいて最も重要な要件は、患者自身の自己管理能力の著しい向上である。自分の現状を正確な情報を与えられ、自分の目で見て、明確に正確に理解した。それを少しでも良くするにはだれが何をしなければならないかを与えられ、それを100%信じて実行し、だめだと思っていたものが少しづづ良い方向に変化していくことにより自分の努力次第で何とかなるかもしれないとモチベーションの向上に繋がった。結果が出ることによりさらにモチベーションを高みに引き上げ更なる結果を出した。担当衛生士の高い熟練度を示したグレイシーキュレットの使用そして治療の度に用いたMetronidazolも大きな貢献をもたらしたと考える。
治療前後の比較 左右側方面観
咬合高径の回復もなされており、咬合は安定している。
この後、最初の紹介医に戻され補綴処置を行い家族の転勤の伴って米国へ転居することになったため、米国歯周病専門医にトランスファーにて継続メインテナンスを依頼した。
治療前後のレントゲン写真の比較
左は治療前、垂直・水平的骨吸収が激しく白線も消失している。歯槽頂部の連続性も見られない。
右は治療後である。歯槽頂部の明瞭な白線は連続しており著しい回復が認められる。
治療前、摂食機能障害、発音機能障害、審美的問題等抱えQOLを著しく損なう生活を強いられる生活を送ってきたが、治療後は治療前とは異なる自分なりに高いQOLを維持した生活が送れるようになったとの事。
人前に出る事、話すこと、食べることが苦痛で引きこもっていたが治療後は積極的に人前にでるよう努力できるようになった。また家族の米国転勤が決まりタイミングよく海外の生活にも希望が持てるとの事。
話し声、話し方、表情がとても明るくなり、機能面ならず精神的にも大変有用な治療であった。
患者に通常より多くの努力と多くの時間を費やす事を強いる事。
矯正治療との併用でありまた。保険でカバーできる治療は限られておりそれなり費用が掛かる。